温泉チャンピオン 郡司勇の温泉サイト » 2010 » 3月
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郡司が実際に行き、観察・記録した湯について書いています。
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温泉紀行
2010/03/31 東北 
湯の川 沼尻元湯 


1 沼尻元湯
野湯 徒歩40分 薄白濁、強酸味、硫黄臭多し PH 1.9
毎分10000リットルの湧出と田村屋の分析表に記入

こんなに凄い湯が、まだあったとは驚きであった。川の流れが全て温泉である、川湯としては、登別の湯の川や川原毛湯の滝、山ん城温泉、カムイワッカ温泉などもあるが、これらに匹敵する素晴らしさだ。ここに来て本当に感動してしまい100点を付けたかったが結構人が多く、神秘的な風情が無かったので98点で止めておいた。しかし湯量、温度、泉質、色、味、匂いなど温泉が表現する全てのものがほぼ完璧に揃っており、素晴らしい野湯であると思った。温度は上流に行くと高くなるが下がれば適温になるし、浴槽のような湯溜りは数多くある。今年は温泉に行く回数が少なかったが硫黄島の東温泉とともに良い湯に巡り合えてよかった。沼尻の田村屋からスキー場の中を林道で抜けて登ってゆくと、終点の駐車場に着くが、10台ほどの車が止まっており、先客がいるなと思った。中ノ沢温泉に引く太いパイプに沿っての沢沿いの道を登ってゆくが、ゆるい登りで遊歩道のような感じである。途中に大きな白糸の滝が遠望できる。この滝は落差50mほどある立派な滝で、滝壺は白濁しており、そこでも入浴出来そうである。この滝の段差を過ぎると荒涼とした源泉地帯になる。程なく以前の建屋が崩壊した跡に到着し、その周囲は源泉地帯である。やや手前から入浴可能なのであろう、点々と入浴客がいた。さらに登ると歩道は川を渡るがこの地点が、最終で湯温度はかなり熱くなっており、43度ほどである。ここで先行していた、昨日くろがね小屋に泊まられた武田さんや山田さん、現テレビチャンピオンの高田さん親子に合流した。自遊人の表紙の撮影地点で入浴した。やや熱めなのでその後、カメラを持って下流に下って行った。適温になり、小滝の下の湯溜りの各所で入浴できた。途中数組の入浴客もいた。5mほどの滝が途中にあり、その下は大きな浴槽となり入浴に適していると思われる。各所で入浴三昧をして、満足した。毎分1万リットルと言うが玉川温泉の大噴が9000リットルなので、それよりも多いではないか、単独源泉としたら日本一の源泉湧出量である。しかし渓谷全体から湧出しているので計測不能なのであろう。湯は薄白濁、強酸味(PH1.9)、硫黄臭あり、と観察した。ここで使ったタオルは酸性のために後に、ボロボロになり自己崩壊した。酸性泉の湯にタオルを漬けると後に硫酸の脱水作用で繊維が弱くなり、絞ったり、入浴後にぬぐっているとミシミシと切れて行く。酸性の強力な温泉であることがわかる。

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東北 
米沢周辺の良い湯、滑川・姥湯


1 滑川温泉 福島屋  宿泊 (再訪)
上の湯源泉S―NaCa-HCO3SO4 含硫黄石膏重曹泉
53.6度 総計1232 HS 7.0
中の湯源泉 51.2度 総計 1249 HS 5.8
薄白濁、たまご味、焦げ硫黄臭あり

蔵王から、米沢を越え滑川温泉に到着して宿泊した。以前は日帰り入浴であったので、宿泊は初めてである。道は良くなったが、依然と山深い秘湯である。真っ暗な道を延々と走りやっと宿に着く。今や有名秘湯になってしまったが、この米沢地域には姥湯、大平、滑川などの一軒宿の温泉があり、アプローチも時間がかかるのでなかなか俗化されずに良い湯が残っている。一人旅なので自炊室しか空いてないとのことであるが、古い部屋が好きなのでむしろ喜んで宿泊した。廊下と障子のみで区切られた昔ながらの部屋である。9月の終わりなのに部屋は石油ストーブが点いていた。たくさんの温泉に入浴してきて、やや湯疲れであったが、このような時にはなにも考えずに入浴できる。いつも湯の感触や泉質の観察や写真に気を取られ、ゆっくりとした入浴が出来なくなっているが、宿泊先ではなにも考えずにゆっくりと入浴が出来る。質素ながら美味い夕食の後に、内湯で今日のかもしか温泉山行の疲れを癒した。黒光りする廊下や音の鳴る階段のある、福島屋は姥湯が改築され、白布の茅葺きが残る1軒になってしまった今では、古い建築が残り貴重である。今回は2階の部屋であったが、一部木造の3階になっており小さな部屋であるが3階に泊まりたかった。湯は女性用もあるが内湯と露天風呂ともに混浴である。内湯は上の湯源泉で53.6度の含硫黄石膏重曹泉(S―NaCa―HCO3、SO4)である。溶存1232mgの薄い成分量ながら硫黄分が個性を良く発揮しており良い湯である。硫化水素イオン(HS)として7.0mg含有されているだけであるが、薄白濁し、たまご味、焦げ硫黄臭あり。と記録した。露天風呂の源泉は中の湯源泉で51.2度の溶存1249mgのほぼ同系の源泉である。HSは5.8mgで川沿いの少し離れたところに石組みの浴槽であった。白濁は内湯よりもやや薄く透明度50センチほどであった。写真になると白濁した真っ白な湯に写り良い写真が出来上がった。








2 姥湯温泉 桝形屋 (3回目)
新築されていた。昔の建築は風情があったので残念。
酸性単純硫黄泉 総計 1058 溶存 817 H2S 10.7 PH 2.5
内湯 木製の浴槽 透明 露天風呂は白濁、酸味、少硫黄臭あり
川の水は白濁しており、30度前後。至る所で入浴する。
滝が連続し絶景である。姥湯はまだ古い建物のころに訪問して、1泊したことがある。古い山小屋風の造りの建築であったが、瀟洒で風情があり気に入った。今回は綺麗に新築されていた。この温泉のアプローチが細い林道で、以前は急な部分にスイッチバックして登って行く全国でも珍しい林道であったが、その急な部分は改修されタイトであるが、どうにかバックしなくても回り切れる幅になっていた。
さて終点の駐車場に着くと、姥湯上方の奇岩絶壁が眺められ、やや色づいた渓谷で絶景である。その中に小さく建つ宿が見え、ここから徒歩10分ほどかかる。宿に近づくと奇岩の絶壁がさらに近づき美しい渓谷美である。谷川岳一の倉沢の小さなものといった景観である。酸味を持った硫黄泉が湧出し、内湯と3つの露天風呂がある。うち一つは女性用である。混浴が上下に2ヶ所ある。綺麗に白濁し絶壁の背景と沢の渓流とあいまって美しい露天風呂である。



日本でも景観の美しい露天風呂としては屈指のものであろう。白濁、酸味、硫黄臭と記録した。内湯と女性用露天風呂は透明である。違う源泉なのであろうか?硫黄臭も少なかった。51.1度の酸性単純硫黄泉でPHは2.5と酸性である。H 3.3mg Na 33.8mg Ca 47.5mg Mg 7.4mg Fe 9.6mg Al 25.8mg Cl 22.2mg HSO4 58mg SO4 519.5mg で溶存物質計 817.2mgの明礬系である。H2SO4 0.5mg CO2 230.1mg H2S 10.7mgをほかに含有し総計1058mgとなっている。10.7mgの硫黄分は良く発揮されていて色と匂いに良く表現されていた。露天風呂からの眺望は最高で山側に見える黄色い岩肌が特に美しい。前回訪問した時には川の対岸に白いかもしかが現われ見ることができた。露天風呂のすぐ横に流れている川は、両側から温泉が湧出して流入しており、やや暖かい川となっている。6本の源泉があるが使われている源泉は1本で5本は自然に流れ去っている。川は弱い酸味と薄く白濁しており温泉の雰囲気がある。滝や淵が連続し美しい沢となっている。温度も28から30度程度あり、綺麗な滝壺で入浴した。そのほかにも沢の上下で温泉の流入しているところはやや暖かくなっており各所で入浴した。泉質と景観の良い温泉でアプローチも遠い秘湯である。川でも入浴できてたいへん満足した。

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東北 
蔵王温泉の共同湯と宿

1 蔵王温泉  川原湯共同湯  (数回目)
本日、適温、掛け流し多量好調 加水なし H 36.1 H2S 18.4
Al 298.4  48.1度 国内屈指の足元湧出共同湯 新鮮で透明、流れ去る溝で黄色くなる



全ての温泉に優劣は無いと言いながら、温泉を評価をするということは、不遜な行為のような気がする。しかし使い方や、湧出状況、泉質や色や匂いなどが特殊で、数多くの温泉を廻っていて、ほんとうに良かったなあ、、、と思える温泉があることは確かである。この蔵王温泉の宝、いや日本の温泉の至宝とも言える共同湯がこの川原湯であろう。100点に限りなく近い温泉である。そして今回は湯温、湧出量ともに絶好調の時で、さらに誰も入浴客が居ない幸運に恵まれた。稀なる幸運であろう。足元湧出の源泉浴槽なので、一切加工できないここの湯の温度はいつも高く、加水しないと入浴できない温度である。しかし今回は適温やや熱目ながら微加水であった。そして湧出量もいつもよりは多く、共同湯建屋周囲から溢れる、掛け流しの川も大きくなっており、数回訪問したが今回が最高の表現で歓迎してくれた。蔵王温泉の共同湯は大露天風呂を含め4ヶ所あるが、上湯、下湯、川原湯は内湯で瀟洒な木造の建物が良い。特に川原湯は小さな湯小屋で、木の壁は風雪によって茶色に煮締めたような色に風格が増している。足元湧出の温泉がすぐ脇から溢れ、周囲は池のような温泉溜りになっていて、そこから硫黄分が析出し始めて黄色い小川になって流れ去っている。素晴らしい存在である。湯は含硫黄鉄・酸性明礬泉(含H、S、Fe―Al-SO4、Cl)でPH1.45の強酸性である。特記成分として水素イオンが36.1mgとFe 89.5mg、Al 298.4mg CO2 387mg H2S 18.4mgである。硫黄泉としても18.4mg含有されているが新鮮なために全く白濁していない、奇麗な透明である。そしてあの強力な硫黄の個性が強力な酸に負けて出ていないのが凄い温泉である。さらに主成分の明礬の渋みも水素イオンの酸性度のほうが勝っており、ピリピリとした酸味である。まさに本格的な酸性泉である。奇麗に澄み渡った湯が、意外と隙間の大きな格子の底から湧出して、床に滔々と溢れている。柱や床の木組みがしっかりとした太さで、良く見ると立派に造ってある。安易な造りではない立派な共同湯であった。


2 蔵王温泉 上湯共同湯 (再訪)
近江屋3号源泉 49.7度 H44.4 H2S 10.3 PH 1.35 Al 279.9
CO2 634 新鮮すぎて全くの透明、硫黄分が析出する前。

坂道の蔵王温泉街の上のほうに位置し、おおみ屋と高見屋の下にある共同湯である。木造の簡素な造りで、山小屋風の下湯や立派な造りの川原湯より一般的な民家のような外観である。しかし浴室の床も、壁も木造で好感できる。おおみ屋3号泉の湯で49.7度 PH1.35の強力な湯である。酸性度は水素イオンに比例しており、川原湯と比べるとH  44.4mgと8mgほど多くなっている。硫黄分は10.3mgと少ない。新鮮なためにまだ透明で酸味が強く出ている。微硫黄臭があるが、酸と明礬の強い個性によって硫黄分はまだ本領発揮していないように感じる。透明、強酸味、微硫黄臭と記録した。蒸発3487mgの含H、S、Fe―Al-SO4、Cl泉で蔵王一般の泉質ながらH 44.4mg Al 279.9mg Fe 68.5mg F 27.3mg Cl 808.8mg HSO4 2833mg SO4 1886mg CO2 634mg H2S 10.3mg H2SiO3 221.2mgという内容である。総計は分析表に記載のもので7119.2mgと等張性に近くなっている。Na,Ca,Mgなどの金属類も適度に入っている源泉である。小さな浴舎の割りに浴槽が大きく浴槽のほかは周囲に90センチほどの床が廻っているだけである。石鹸が効かないので身体を洗っている人は居なかった。総木造の浴槽と床で硫黄分によって白い析出物が少量であるが固着している。掛け流しの湯が床に流れ新鮮な湯であった。


3 蔵王温泉 高見屋
2号泉 45.1度 H50.1 蔵王一の酸性度 PH 1.30 せせらぎの湯で使用
5号泉 42.8度 H45.38 Al 334.3 CO2 882.2長寿の湯で使用
ともに白濁、強酸味、硫黄臭あり

蔵王温泉街の一番上にある温泉宿でその名も高見屋である。木造3階の宿で、古い造りをうまく改修して奇麗な内装になっている。玄関に入ると磨かれた床が光り、床に置かれた照明と、ダウンライトだけの雰囲気を出した室内である。ここの源泉に蔵王一の酸性を誇る高見屋2号泉があり。水素イオン50.1mgでPH1.3の日本第2位の酸性泉である。本館は明治の終わりの頃に建てられ、築100年ほどであるが外装内装共に改築され、奇麗な建築になっている。PH日本2位の2号泉はせせらぎの湯で使われ1号泉が長寿の湯で使われている。せせらぎの湯はタイルの床に木枠の内湯に円形の樽風呂の露天風呂が付いている。弱く掛け流しにされている。ここの湯は真っ白に白濁している。特記成分はH 50.1mg Al 206.9mg Fe 92.3mg Cl 817.9mg HSO4 3109mg SO4 1844mg メタ珪酸209.3mg CO2 373mgである。水素イオンが特別に多い硫酸塩泉でほぼ希硫酸に近いであろう。しかし湯は熟成が進み硫黄分が表現に現われて来ており、白濁していた。硫化水素イオンは15.9mgの含有量である。そのためややマイルドな感触になっている。玄関脇にある木造の湯小屋は長寿の湯で42.8度の高見屋1号泉を入れている。PHは1.3で酸性度は2号泉と同じであるが、水素イオンの含有量は45.38mgで少ない。しかしAl 334.3mg Fe 91.31mg CO2 882.2mgと特殊成分の含有量は多くなっており、アルミニウムの含有量は日本屈指の源泉であろう。また温度が低い分炭酸ガスも882mgも含有し炭酸泉の様相も見せる。硫化水素イオンは24.55mgと蔵王でも多いほうで、こちらの湯も濃く白濁している。酸度は強いが硫黄泉の個性も併せ持っており良い。木造の湯小屋で落ち着いた雰囲気で良かった。



4 蔵王温泉 下湯共同湯 (再訪) 85
近江屋3号源泉 上湯と同じ 蒸発3487

下湯共同湯は太い柱を使い、山小屋のような造りの共同湯である。入口右側には大きな刳り貫き石に源泉が流されている。湯量豊富なのであろう、2つの共同湯でも使いきれない源泉である。梁が見える天井の高い空間で、木造の良い造りの浴舎である。総木製の浴槽や床は上湯と同じである。源泉も上湯と同じおおみ屋3号泉が入れられている。上湯では透明であった温泉はここでは硫黄分がわずかに個性を発揮してきており、薄く白濁している。微白濁、強酸味、弱硫黄臭と記録した。硫黄分が析出し白くなった浴槽は雰囲気があり、源泉もやや温度が下がり、適度に掛け流ししており、良い個性が出ていた。湯は新鮮なのが良いのであるが、硫黄を含有する場合、ある程度熟成されると良いものがあり、新鮮な源泉でもある程度の幅がある。循環や源泉タンクなどで鮮度を失ったものは別として、微妙な鮮度で個性が変る硫黄分は繊細で興味が尽きない。これは上々のレベルでの比較である。

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