温泉チャンピオン 郡司勇の温泉サイト » 2013 » 9月
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郡司が実際に行き、観察・記録した湯について書いています。
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温泉紀行
2013/09/08 中部 
徒歩11時間、山奥の立山新湯ほか 

1 天涯の湯
14日夕方に室堂から下ってくると沢の水はずいぶん減っており、濁りも薄くなっていた。ここで車中泊して翌日の朝4時出発とした。周囲はまだ暗い、しかし今日は最奥部の新湯まで行き立山温泉跡で野営するという強行軍である。


行きの登りは白岩堰堤まで9㎞そこから立山温泉跡まで4㎞程度、そして新湯まで7㎞ほどある、つまり登り20㎞、下り7㎞合計27kmほどは歩かないといけない。



結局新湯を往復してテント場まで帰り着いたのは17時過ぎていたので13時間ほどかかったことになる。とにかく情報が少なく、行き方がわからない。



白岩堰堤までも1つのわながあった。林道は3キロほど行くと行き止まりになり、進もうとすると藪漕ぎになる。そこでひらめいたのがトロッコのトンネル経由である。これが正解であった。トンネルを出ると立派な林道が続いていた。



ここをひたすら登る。とにかく長い、いやになってくる頃、左右の沢の斜面が迫ってきて壮大な白岩堰堤が見えてきた。右側に廃道に近いジグザグ道があるが苦労して登ると堰堤の下で終わっていた。結局ここからインクラインの階段を上り堰堤の上に到達した。



ここから折立から来る良い道になり快適に進むと橋の先に東屋が見えてきた。ここが天涯の湯であった。開放的な露天風呂で男湯と女湯、足湯がある。男湯、女湯ともに大きな岩組の露天風呂で内湯は無い。湯は57.9度の単純温泉で総計694㎎である。土類重層系であるが透明、無味、無臭で個性はない。熱い湯で少加水して入浴した。この源泉は立山温泉との間にある泥谷温泉の2本の源泉からの引き湯とのこと。湯の個性よりもまさに名前の通り天涯の果ての温泉である。ここに入浴できて感慨深い。

2立山新湯
今回の温泉行きの目的地でもあり、行き方も良く分からずにアタックするという不安もあり、また立山温泉跡からの距離もあるという難関の温泉である。昨日、砂防博物館で地図や模型を見た時に新湯の位置を確認して、これは遠すぎる。自殺行為に近いのではと強い不安に落とし込まれた温泉である。



模型などで見るとほぼ北アルプスの稜線に近く、果てしない先に位置していた。室堂の横に位置し相当標高は高いと思われた。ザラ峠からの下降もあるがガレが激しく滑落の危険が伴う、松尾峠からの下降もあるがひどい難路であるという。



そのため、とにかく湯の沢を遡上するという一念を持って行った。まず天涯の湯から立山温泉跡までの道が迷った。30分ほど歩いてから林道が急に廃道に近くなってきて、ここは違うということになって、一度天涯の湯まで戻り、良い道の湯の沢トンネルを越えて歩き出した。しかし湯の沢から余りにも離れるのがおかしいと気が付き、戻って再度、同じ廃道を登って行った。



途中から車道は無くなり歩道になる。一度赤い橋まで行ったがここも違うとわかり、また戻り、歩道幅の階段を上ってゆく。不安とともにしばらく行くと、白い噴気が見え、いろいろなホームページに載っていた,噴気塔が発見できた。



これを経由して新湯に行くので勇気づいた。しかしここからの道は急登で、私は急にバテて、これでは新湯まで行けないのではないかと、根を上げた。体力の限界に近付いており、52歳の体には厳しくこたえ始めた。



すると20分ほどであっけなく舗装路に突き当たった。これが折立から来る車道であることは間違いない。ほどなくとりあえずの目標にしてきた、立山温泉跡に到着した。ここの慰霊塔に花を奉り、後ろの東屋に非常食、カメラなどアタック用の荷物以外のテントや寝袋、コッヘルなど重いものを下した。軽装で往復するのである。



川原は工事の中心地なのであろう、広く開削されており、道も生コン車が通れるほどである。しかしだんだんと登ってゆくと道路の中心部が大きく亀裂になっており、濁流が流れてきた。昨日の大雨の傷跡であろう。大きなコンクリートの堰堤をいくつか超えると、ついに新湯の、湯の沢の沢登りになる。



少々行くと、先人の付けたピンクテープが右側に見えたので沢を1回徒渉しただけで荒れた登山道に入った。これが正解で、何度も徒渉を繰り返し堰堤を巻いていたら激しく消耗していただろう。草付きの中をどんどん登るがかなり疲労困憊になってきて、GPSを持っている同行者の佐藤氏に、たびたび「あと何メートル」か聞く。最初は1250mであったのでかなり勇気づいたが、疲れが極みに達してきて、800m、450m。230mと何度もうるさいほどに距離を聞いた。

古い堰堤のところにはロープが設置されていて安心する。最後に急登するとなんと新湯の上の源泉池のほとりに立っていた。青緑色の湯気に包まれた源泉池は神秘的で、沸騰しているのがわかる。ここで入浴できたら最高であるが65度から70度以上とのことで断念し、写真を撮ってまた下って行った。


沢に一度降りて、川の中をトラバースしながら100mほど登ると、湯の小沢があり、ここまでの苦労が報われる温泉がその上にあると思うと感動した。湯沢を登ってゆくと崖の上を湯が流れている光景が見えてきた。

その下に土嚢で積まれた小さな湯溜りがあった。スコップで底をさらい、深くして入浴した。日本でも有数の超秘境の温泉であろう。やっと行くことができた。43度前後の熱めの湯で酸性泉であろうか透明、酸味、微硫黄臭であった。


単純酸性泉だと推測する。直角に上部から湯が流れてくるので打たせ湯もできる。上部はカムイワッカの滝のようにナメ滝になっていた。

3立山温泉跡 野湯3か所 ケーシング1か所
立山新湯からの下りは快適であった。一度通った道を下るのは、行き先のわからない登りに比べて精神的にもそうとう楽である。ほどなく林道に出る前に、熊に遭遇した。私の2mほど前を過ぎ去り右横に止まっている。



私は同行者に告げ、早々と逃げ去ったが、その友人は写真を撮っていた。林道に出るとだらだら下りで楽である。立山温泉跡のキャンプ地に17時頃到着した。今日中に立山温泉跡も入浴してしまおうと源泉案内地図看板通り、橋を渡る。



川沿いに3か所の湧出があり橋の上からも湧出しているのが見える。湯量豊富である。3か所の源泉湧出口から湯の流れが川に流れている。それぞれ毎分120リットルほどはあるであろう。



橋を渡り階段を下ると源泉地帯に出た。塩ビパイプからの湧出もあり、透明、無味、無臭であるが劇熱である。70度ほどであろう。高温の単純温泉だと推測した。熱くて入浴不可能なので川に入り、温泉と流れの合流地点で腰までの入浴をした。



一応3か所とも入浴しておいた。河岸に直径80センチほどのケーシングがあり底から温泉が湧出していた。適温の足元湧出ケーシングで浅く腰上くらいの深さである、しかし41度くらいの良い温度であった。



ここにも入浴した。3か所の劇熱湧出口はスコップやブルーシートなどで加工すれば快適な浴槽を造ることも可能であろうが時間が掛かるので川の合流地点で済ました。

24.8.16
1護天涯の噴気温泉
60度以上の噴気が沢沿いにあり、5mくらい噴出している。触ると熱く噴き上げた温泉が雨のように降ってくるところでは浴びることができる。



立山温泉の下流500mほどなので泉質もほぼ同系で透明、無味、無臭の単純温泉であろう。PH8.2 EC 1.2であった。景観の良い沢を眺める良い地点にあり、浴びている写真も絵になった。



2泥谷の湯(湯川谷6号泉)
山道から廃道の林道に出てからすぐにクランク状の道になるがその奥にピンクテープがあり温泉地の泥谷温泉の位置と一致していたので行ってみた。



藪を50mも行くと沢に小さな流れがあり、温度もあった。透明、少えぐ味、無臭で31.5度 PH 8.2 EC 0.5であった。小さな湯溜りをスコップで造って尻浴とした。まあやや暖かい湯であった。近くのピンクテープには湯川谷6号泉と書いてあった。



3天涯の湯
帰りに天涯の湯に寄った。透明、無味、無臭の単純温泉であるが肩まで着かれる湯は良いものだ。洗髪し、さっぱりした。するとここの湯守りのおじさんが現れた。特に指摘は受けなかったが入って行けということで入浴できた。



昨日来た時にはなかった浴槽の栓を抜き、カラにして帰った。この後重要文化財の白岩堰堤を見学し、階段で林道まで下り長い林道を下った。





 

 

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