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2010/03/31 東北 
蔵王温泉の共同湯と宿

1 蔵王温泉  川原湯共同湯  (数回目)
本日、適温、掛け流し多量好調 加水なし H 36.1 H2S 18.4
Al 298.4  48.1度 国内屈指の足元湧出共同湯 新鮮で透明、流れ去る溝で黄色くなる



全ての温泉に優劣は無いと言いながら、温泉を評価をするということは、不遜な行為のような気がする。しかし使い方や、湧出状況、泉質や色や匂いなどが特殊で、数多くの温泉を廻っていて、ほんとうに良かったなあ、、、と思える温泉があることは確かである。この蔵王温泉の宝、いや日本の温泉の至宝とも言える共同湯がこの川原湯であろう。100点に限りなく近い温泉である。そして今回は湯温、湧出量ともに絶好調の時で、さらに誰も入浴客が居ない幸運に恵まれた。稀なる幸運であろう。足元湧出の源泉浴槽なので、一切加工できないここの湯の温度はいつも高く、加水しないと入浴できない温度である。しかし今回は適温やや熱目ながら微加水であった。そして湧出量もいつもよりは多く、共同湯建屋周囲から溢れる、掛け流しの川も大きくなっており、数回訪問したが今回が最高の表現で歓迎してくれた。蔵王温泉の共同湯は大露天風呂を含め4ヶ所あるが、上湯、下湯、川原湯は内湯で瀟洒な木造の建物が良い。特に川原湯は小さな湯小屋で、木の壁は風雪によって茶色に煮締めたような色に風格が増している。足元湧出の温泉がすぐ脇から溢れ、周囲は池のような温泉溜りになっていて、そこから硫黄分が析出し始めて黄色い小川になって流れ去っている。素晴らしい存在である。湯は含硫黄鉄・酸性明礬泉(含H、S、Fe―Al-SO4、Cl)でPH1.45の強酸性である。特記成分として水素イオンが36.1mgとFe 89.5mg、Al 298.4mg CO2 387mg H2S 18.4mgである。硫黄泉としても18.4mg含有されているが新鮮なために全く白濁していない、奇麗な透明である。そしてあの強力な硫黄の個性が強力な酸に負けて出ていないのが凄い温泉である。さらに主成分の明礬の渋みも水素イオンの酸性度のほうが勝っており、ピリピリとした酸味である。まさに本格的な酸性泉である。奇麗に澄み渡った湯が、意外と隙間の大きな格子の底から湧出して、床に滔々と溢れている。柱や床の木組みがしっかりとした太さで、良く見ると立派に造ってある。安易な造りではない立派な共同湯であった。


2 蔵王温泉 上湯共同湯 (再訪)
近江屋3号源泉 49.7度 H44.4 H2S 10.3 PH 1.35 Al 279.9
CO2 634 新鮮すぎて全くの透明、硫黄分が析出する前。

坂道の蔵王温泉街の上のほうに位置し、おおみ屋と高見屋の下にある共同湯である。木造の簡素な造りで、山小屋風の下湯や立派な造りの川原湯より一般的な民家のような外観である。しかし浴室の床も、壁も木造で好感できる。おおみ屋3号泉の湯で49.7度 PH1.35の強力な湯である。酸性度は水素イオンに比例しており、川原湯と比べるとH  44.4mgと8mgほど多くなっている。硫黄分は10.3mgと少ない。新鮮なためにまだ透明で酸味が強く出ている。微硫黄臭があるが、酸と明礬の強い個性によって硫黄分はまだ本領発揮していないように感じる。透明、強酸味、微硫黄臭と記録した。蒸発3487mgの含H、S、Fe―Al-SO4、Cl泉で蔵王一般の泉質ながらH 44.4mg Al 279.9mg Fe 68.5mg F 27.3mg Cl 808.8mg HSO4 2833mg SO4 1886mg CO2 634mg H2S 10.3mg H2SiO3 221.2mgという内容である。総計は分析表に記載のもので7119.2mgと等張性に近くなっている。Na,Ca,Mgなどの金属類も適度に入っている源泉である。小さな浴舎の割りに浴槽が大きく浴槽のほかは周囲に90センチほどの床が廻っているだけである。石鹸が効かないので身体を洗っている人は居なかった。総木造の浴槽と床で硫黄分によって白い析出物が少量であるが固着している。掛け流しの湯が床に流れ新鮮な湯であった。


3 蔵王温泉 高見屋
2号泉 45.1度 H50.1 蔵王一の酸性度 PH 1.30 せせらぎの湯で使用
5号泉 42.8度 H45.38 Al 334.3 CO2 882.2長寿の湯で使用
ともに白濁、強酸味、硫黄臭あり

蔵王温泉街の一番上にある温泉宿でその名も高見屋である。木造3階の宿で、古い造りをうまく改修して奇麗な内装になっている。玄関に入ると磨かれた床が光り、床に置かれた照明と、ダウンライトだけの雰囲気を出した室内である。ここの源泉に蔵王一の酸性を誇る高見屋2号泉があり。水素イオン50.1mgでPH1.3の日本第2位の酸性泉である。本館は明治の終わりの頃に建てられ、築100年ほどであるが外装内装共に改築され、奇麗な建築になっている。PH日本2位の2号泉はせせらぎの湯で使われ1号泉が長寿の湯で使われている。せせらぎの湯はタイルの床に木枠の内湯に円形の樽風呂の露天風呂が付いている。弱く掛け流しにされている。ここの湯は真っ白に白濁している。特記成分はH 50.1mg Al 206.9mg Fe 92.3mg Cl 817.9mg HSO4 3109mg SO4 1844mg メタ珪酸209.3mg CO2 373mgである。水素イオンが特別に多い硫酸塩泉でほぼ希硫酸に近いであろう。しかし湯は熟成が進み硫黄分が表現に現われて来ており、白濁していた。硫化水素イオンは15.9mgの含有量である。そのためややマイルドな感触になっている。玄関脇にある木造の湯小屋は長寿の湯で42.8度の高見屋1号泉を入れている。PHは1.3で酸性度は2号泉と同じであるが、水素イオンの含有量は45.38mgで少ない。しかしAl 334.3mg Fe 91.31mg CO2 882.2mgと特殊成分の含有量は多くなっており、アルミニウムの含有量は日本屈指の源泉であろう。また温度が低い分炭酸ガスも882mgも含有し炭酸泉の様相も見せる。硫化水素イオンは24.55mgと蔵王でも多いほうで、こちらの湯も濃く白濁している。酸度は強いが硫黄泉の個性も併せ持っており良い。木造の湯小屋で落ち着いた雰囲気で良かった。



4 蔵王温泉 下湯共同湯 (再訪) 85
近江屋3号源泉 上湯と同じ 蒸発3487

下湯共同湯は太い柱を使い、山小屋のような造りの共同湯である。入口右側には大きな刳り貫き石に源泉が流されている。湯量豊富なのであろう、2つの共同湯でも使いきれない源泉である。梁が見える天井の高い空間で、木造の良い造りの浴舎である。総木製の浴槽や床は上湯と同じである。源泉も上湯と同じおおみ屋3号泉が入れられている。上湯では透明であった温泉はここでは硫黄分がわずかに個性を発揮してきており、薄く白濁している。微白濁、強酸味、弱硫黄臭と記録した。硫黄分が析出し白くなった浴槽は雰囲気があり、源泉もやや温度が下がり、適度に掛け流ししており、良い個性が出ていた。湯は新鮮なのが良いのであるが、硫黄を含有する場合、ある程度熟成されると良いものがあり、新鮮な源泉でもある程度の幅がある。循環や源泉タンクなどで鮮度を失ったものは別として、微妙な鮮度で個性が変る硫黄分は繊細で興味が尽きない。これは上々のレベルでの比較である。

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